天然の香りが、ヒトをリラックスさせる理由
まちを歩くと、ふとよい花の香りを感じてほっこり。
緑が多い場所だと、なぜだか気分が落ち着く。
ハーブティーを飲んで、リラックスする。
なにげない瞬間にかぐと、ほっとリラックスさせてくれる天然の植物のかおりたち。
・・・ でも、なんでヒトは天然の香りでリラックスできるんでしょう?
その秘密は、植物の生き残り戦略に隠されていました。
植物は、ヒトや動物と違って環境が一変してもその場から逃げ出すことができません。
だって、動けませんから。
生き延びるためには、栄養を吸収し、外の敵(病原菌、虫や動物、乾燥や直射日光などの外部環境)から身を守りつつ、さらに子孫をのこしていかないといけません。
すべて、「動かずに」です。
そこで、身につけた生き残り戦略が、
「他にない成分をつくる」こと。
(ちなみに、この植物がつくった独特な成分を、ヒトが発見して応用したものが薬のはじまりです。生薬・漢方薬はこうして生まれています。また、植物が作り出す成分の一番効きそうな場所だけを取り出して使う西洋薬学のはじまりは1804年ごろ。植物のケシから採取できるアヘンという生薬をモルヒネという1つの物質にわけることからスタート。この分野は、現在進行形で研究が続いています。)
そのひとつが「特殊な香りを出す」という方法でした。
例えば、ミツバチにとって良い香りを出して子孫を残すため受粉してもらったり。
病原菌にとって「イヤなかおり」を出すことで、菌をよせつけないようにしたり。
植物の香りのヒトへの応用は、本当に現在進行形で進んでいます。
例えば、シナモン。
(そう、オシャレなカフェに行くとドリンクに刺さっていたりするあれです。
粉末を、カフェラテにかけたりしている、あの茶色いお粉のことです)
2016年6月、米国ラッシュ大学のパハン教授率いる研究チームは、
シナモンが脳にとって「香りがよい薬」になるかもしれない
と発表しました。
研究チームではマウスを迷路テストにかけて実験。記憶力が良くないマウスは、迷路テストで、正しい穴を見つけるのに、約150秒かかっていました。
けれど、シナモンを与えたところ、1ヶ月後には、60秒以内に正しい穴を見つけたといいます。
半分以下の時間で、正解にたどり着いたのです。
「シナモンが勉強にいい」なんて、
一見してもう研究されていそうなことも、まだまだ現在進行形で研究がすすむ香りの研究。
現代科学においての「証明」は現在進行形ですが、
香りの力は古くから利用されてきました。
生薬などと同じながれです。
古くは薬草を扱う知識がある人が尊敬され、その後宗教戦争に巻き込まれたり (魔女狩りですね)。
人の生死を扱う知識が宗教権力の外にあるとマズいので、宗教の内部に囲われたり。(今でも、ヨーロッパに旅すると、教会の中に薬局がありますよね。)
その後、フランスなどではアロマテラピーとして処方箋薬として使われることもありますが、日本国内では、香りの薬効利用はあまり進んでいません。
植物の香りを凝縮した「精油(エッセンシャルオイル)」はあくまで雑貨として扱われています。
植物の世界や、香りの世界には、可能性がいっぱい。
すこしずつ、紹介していきます。
参考:『植物はなぜ薬を作るのか』斉藤和季/文芸春秋社、Modi, K.K., Rangasamy, S.B., Dasarathi, S. et al. J Neuroimmune Pharmacol (2016) 11: 693. https://doi.org/10.1007/s11481-016-9693-6
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